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絵コンテで見る、ちはやふるの世界
第三回 いしづかあつこ氏に聞く(後編)、
第ニ首「からくれなゐに」で力を入れたシーン

いしづかあつこ プロフィール

愛知県出身。大学在籍中より、アニメーション作家として創作活動を開始。2004年、マッドハウスに入社し、NHK「みんなのうた」にて初監督作品『月のワルツ』を制作。その幻想的な映像が話題となる。その後、『MONSTER』『NANA』『ピアノの森』『メイプルストーリー』『黒塚-KUROZUKA-』などで絵コンテや演出を担当。

最新作『SUPERNATURAL: THE ANIMATION』では宮繁之と共同で監督を務めた。本作は2011年11月現在・関東のみで『ちはやふる』放送後、 26:29〜日テレにて放送中。

−− さて、引き続き第二首、試合以外のところではいかがでしたでしょうか。

いしづか 太一がメガネを取っちゃうシーンかな。あそこは割とカットを積んでいるんですよ。

−− それはどのような意図で?

いしづか 太一を悪者にしたくなかったんで……。やってることは卑怯なことなんですけど、気持ちは分かるじゃないですか。負けられないし、負けたくもないし、追い詰められているし、千早と仲良くしやがって……といういろんな黒い感情がうごめいているので。かといってそれを直接的な行動で描いてしてしまうと、太一が浅はかに見えるし、表情で捉え過ぎると悪いやつになってしまうし、ということで、間接的に描くというやり方にしました。

−− 太一はメガネを取ることに、逡巡しているように見えますね。

いしづか ええ。このシーンであえて渡り廊下を選んでいるのも、間接的に心情を描くということの一環です。

−− そういえば、原作だと太一は外にいましたね。

いしづか (影ができない外を避けて)渡り廊下にしたので、胸から上、顔に影が落ちるように設計でき、太一に対して影を落とすことができました。

左が渡り廊下のシーン。ト書きでカゲ中の指示がある。
その後、太一はふたりを見つけ、立ち去ろうとするが、
一度立ち止まり背中を見せ……と迷う。

−− 太一は他にもメガネをカチャカチャやったりと、迷っている感じがしますね。

いしづか 今回はそこが肝だと思って。太一がメガネを返す瞬間に、視聴者がぐっとくるようにできればと。

−− 自分も小学生の頃を思い出しました。ちゃんとメガネを返せた太一は偉いなと思いましたよ……。

いしづか 小学生だと、普通はああなってしまったら返せないと思います。だから、教室で返すシーンはカッコ良くしたかったですね。新がエアカルタ(カルタを取る素振り)をしてるあたりからは綺麗に綺麗にと。

−− ここから先は視聴者も感情が盛り上がってくるところですね。

いしづか 千早が外に出てからは、千早サイドと太一サイドを交互に見せていくようにしました。自分がメガネを持っているのに、千早は自分のことを信じてて、一方で泥まみれになって探している。それは太一にとって辛いことで、見てる側は太一の視点に立って見ているはずなので、視聴者の感情も高まっていく方向に持っていけるかな…と。

−− 見事でした……。

いしづか 今回はいろんな事を実験的に考えてコンテを描いていたんですが、完成したものを見て、うまくまとめていただけて本当によかったなあ、と。描いていた時は恐る恐るだったんですけどね(笑)。浅香監督はじめすべてのスタッフ様方、ありがとうございました。

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