マインド・ゲーム!
佐藤竜雄
『ねこぢる草』を作っている頃、なぜか二人で西新宿をとぼとぼ歩いていたことがありました。その時、湯浅君からこれから作ろうとしている映画についての話を色々聞きました。曰く──
『MIND GAME』という漫画が原作で、現場はSTUDIO 4℃
それでもってその漫画の単行本がなかなか手に入らない
この間大阪にロケハンに行ったんだけどもう少し資料がほしい
あとは「リミッター」を外して作品作りをするにはどうしたらよいか〜なんてことも話したりしてました。「僕らの作っているアニメは共同作業だから思ったほどイッちゃうこともないし、そういう意味で破綻することはないよ(破綻するなら別の理由)」と答えると、湯浅君は「それでもある局面ではそういうシチュエーションというか、イッちゃうことも必要なんじゃない?」と食い下がります。更には「そういう時、監督はどうすればいいのかな」と。僕も基本的にはTVアニメの監督ですから偉そうなことは言えません。ただし、『ねこぢる草』の構成について「ホントにこれで良いの?」という湯浅君の度々の問いに「監督がイイと思っているから大丈夫。そう言い張るのも監督の仕事」と答えていましたから、その時も「最初に“イケそう”と思ったら考え直すのがTVアニメで、腕もセンスもあるような連中が揃ってる劇場アニメだったら、そのまま行っちゃっていいんじゃない」なんてこれまた無責任な事を答えたような気がします。
結局、その話題は西新宿の街並みを見た湯浅君が「あ、ここ(『マインド・ゲーム』に)使える」とつぶやき、「ごめん、ここでオレ写真撮るから」と言ったが早いか、プイと消えてしまったので途中でおしまいになってしまいました。
映画『マインド・ゲーム』は一見すると感覚的、暴力的な印象を受ける方もいるかと思いますが、実力ある運動選手が己の体の理屈に乗っ取ってベストタイムを叩き出すがごとく、実にスマートな映画になっています。正しいフォームで走ったときに体がぐいぐい前にでるような快感、運動的理性とでもいいましょうか。ロジカルではないロジカル…言葉に出来ない頭の中のパズルがピタリと合わさる気持ちよさ、そんな感覚を覚えた人も少なくないのではないでしょうか。だからこそラストの展開は正にラストスパート。オリンピックシーズンに実は最もタイムリーな映画だったのかもしれません。
こんなにスゴイ映画を撮ってしまったら枯渇して次はもう作れないのでは? なんて心配してる人もいるようですが大丈夫。湯浅君はまだまだベスト記録は伸ばしていくはずです。次の大会に期待しましょう!
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