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おぎにゃんと学ぼう! アニメの作り方
■第6回 これで脚本はばっちりにゃ!(後編)

おぎにゃん
脚本を書くときに、「映像」を意識するのは大切なことにゃ?

金春
脚本って基本的に絵になるもの以外は書いてはいけないと言われているの。感情ト書きは書いちゃだめ、とか。

おぎにゃん
感情ト書きってなんにゃ??

金春
例えば主人公の気持ちを表したいときに、「悲しくてたまらない」と書くのが感情ト書き。悲しくてたまらない、だとどうやって絵にすればいいのかわからない。だから、気持ちをそのまま書くのではなく、悲しくてどういう行動をとったのか、を書かなくてはいけない。例えば、悲しみにうちひしがれた結果、「ハンカチを持つ手が震えている」とかね。

おぎにゃん
絵になる表現をしないといけないんだにゃ。

金春
昔、脚本を習っていたときに「一緒に登校しようと、ある小学生の子が友達を誘いにきた。けれど、友だちは病気だった」という設定があった。私はその次のト書きで「少女、気にしながら去っていく」と書いたんだけど、先生に「この気にしながら、というのは絵にならない。あなたの考える気にしながらの動作を盛り込みなさい」と言われた。「気にしながら」の代わりに、「去りかけて、ちょっと振り返る」と書けば絵の表現になったんだよね。

おぎにゃん
心のなかにあることをそのまま書いちゃだめにゃんだな。

金春
とは言っても、実際には私もニュアンスを伝えるために、補足的な感情ト書きは時々書くよ。「(悲しくて)そんな……」みたいなのとか。それも、絵コンテマンや演出家に脚本の意図を理解してもらいたいから。脚本の意図を伝えようとした結果、感情ト書きが増えてしまったの。

おぎにゃん
そうにゃのかぁ……。話は変わるけど、TVシリーズとOVA、映画ではそれぞれ脚本を書くときに注意することは違うのかにゃ?

金春
最近は深夜アニメの本数も増えたので一概には言えないけど、ファミリー向けのTVアニメだと、お茶の間で何かしながら見ることが多いでしょう。だからセリフを聞いていればストーリーを追える程度に、わかりやすく書くよ。

おぎにゃん
そんなことまで考えるんだにゃ!

金春
そういう作品では、子供にわかりやすくということで、画面に手紙の文字が出てきたら必ずセリフで読み上げる。立ち入り禁止、って書かれた看板が出てきたら「あ! 立ち入り禁止だ!」ってキャラクターに言わせる。そういう部分はわりと意識しているよ。

おぎにゃん
OVAでは?

金春
OVAはTVシリーズに比べたら、集中して見てもらえるはず。わざわざ購入したり借りたりしているわけだからね。何度も繰り返して見ることが多いし、対象の年齢層も高めなので、ちょっと凝った構成とセリフで話を進めたりするかな。映画も、映画館で見ること前提だから、お客さんはアニメの世界に入り込みやすい環境にいる、ってことを意識するよ。

おぎにゃん
他に気をつけていることはあるにゃ?

金春
私が脚本を書くときに注意しているのは、登場人物の感情の流れを大事にすること。感情をきちんと書けばストーリーも自然な流れになると思ってるの。

おぎにゃん
金春さんは実は小説も執筆しているのにゃ(注4) !

金春
えへへ。

脚本を書く金春さん。いっぷう変わったキーボードが気になるにゃ!

おぎにゃん
脚本と小説との違いも知りたいにゃあ。

金春
実は脚本と小説ってあべこべな面があるの。脚本は絵にできないことを書いてはいけないけど、小説のおもしろさはむしろ登場人物の心情の描写にあったりするよね。それに小説では、色んな言葉を取捨選択して、丁寧に文章を組んでいくでしょう。わざと言葉をぼかしたり言い回しを変えて説明することもある。けれど、脚本は逆で、分かりやすくシンプルなト書きが要求される。

おぎにゃん
「おぎにゃんのやわらかい毛並みを、春風が母親のようにやさしくなでた。おぎにゃんは春の到来を感じてほっこりした」ではなく具体的に「春風になびき揺れるおぎにゃんの毛並み。おぎにゃんは目を細め、ひげをぴくぴく動かす」みたいな?

金春
よくできました(笑)。それから、夜のシーンを書いて、次に翌々日の朝のシーンを入れたかったとする。小説なら、「その翌々日……」と書けばいいけど、アニメの場合、ただ朝のシーンを入れただけでは翌日と思われちゃうのね。そこでどういう手段でそれが翌々日だと伝えるか、がミソになるの。脚本家の腕の見せどころというか。

おぎにゃん
夜→朝→夜→朝って、シーンをくり返せばいいにゃ。

金春
それだとシーンが多くなるよね。1番楽なのは、カレンダーのアップで翌々日の日づけを見せて時間の経過を示すとか、テロップで「翌々日」と入れるとか。でも、そうじゃなくて状況や会話で自然に見せようと思うと、けっこう工夫がいるの。

おぎにゃん
難しそうにゃ。

金春
そう、難しいの(笑)。今は小説はお休みしてるけど、脚本と小説を並行して執筆していたときは、頭の切り替えがとても難しかったよ。小説を書いた後に今度は脚本、ってなると自分でうまくリセットできなくて。

おぎにゃん
そもそもどうして小説を書いたのにゃ?

金春
基本的には依頼がきたので(笑)。アニメーターの方が絵本を出されたりするでしょう。それと似ているかもしれない。アニメではやれないことを小説でやってみたいと思ったの。

おぎにゃん
脚本の作業って絵を描かないし、ぶっちゃけアニメ制作っぽくないにゃ。どうして、脚本家になったのにゃ?

金春
アニメを書いてる脚本家には2種類のタイプがあると思う。アニメ制作に関わりたいって気持ちから脚本家を目指す人と、もともと脚本が書きたいってところから入った人と。私の場合、アニメは好きだけど絵が描けなくて(笑)。それで大学生のときに、アニメに関われる仕事で私にできることは何だろうって考えて、脚本の勉強を始めた。

おぎにゃん
それが出発点だったんだにゃ。金春さんは今後こういう作品に関わりたい、っていうのはあるにゃ?

金春
おもしろい作品なら何でも(笑)。いつか時間テーマのファンタジーものができたらいいな。

おぎにゃん
そのときは、ぜひおぎにゃんを主人公にしてくれにゃん! 今日はありがとうございました〜!

 

 

注4)ミステリー小説『春菜の事件簿』シリーズのほか、『犬夜叉』や『うる星やつら』の小説版も手掛けているにゃ。
脚本のことはわかったかにゃ?
金春さんは、おっとりいやし系で、お話もとてもわかりやすかったにゃ。
あれ、そこにいるのは金春さん? え? ニボシくれるのにゃ!?
最高級ニボシももらったにゃー!! ぽりぽり。
次回も引き続き金春さんに、シリーズ構成についてお聞きするにゃん!
それではまた、バーイバイにゃん!! 
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