―― 『メイプルストーリー』はゲームが原作になりますが、アニメ化するにあたって、特にここに注目して欲しいというところはありますか? 石山 ゲームでは横スライドの動きだったキャラクターも、アニメでは飛び跳ねますからね。動いて面白いとか、表情が豊かだとかといった「漫画映画」的なところです。
―― 漫画映画ですか。 石山 ええ。マッドハウスの作品は、どれもクオリティが高くスマートでカッコいい印象があったのですが、それは一面でしかなく、マッドハウスのスタッフの実力は、もっと奥深いし、広くて、厚い事に気づいたのです。だから、『メイプルストーリー』は、今までとはひと味もふた味も違う、動きやデザインの素晴らしさを活かす作品にしたいんです。今回、私自身がそういった方々の仕事を間近で見られる事に、とても幸せを感じています(笑)。楽しい漫画映画の世界を見て、朝、元気に外に遊びに行ってもらいたいですね。
―― いま、お話が出ましたが、「朝」という放映時間は、意識されているんでしょうか。 石山 ええ。かなりしています。これは、朝の作品を作り続けてきてずっと思っている事でもあるんですが、その30分だけは、お父さん、お母さんが何も心配ないように、子供に見てもらえればと思っています。これがなかなか難しいんですけど(笑)。
―― なるほど。原作はオンラインゲームなので、プレイヤーの数だけ物語があると思うんですが、アニメ版のストーリーはどうなるのでしょうか。 石山 オリジナルになります。でも自分は、ゲーム原作のものを手掛ける時には、ユーザーに「これは違うよね」と思われるものにならないよう、いつも注意しています。今回の場合は、ステージをはじめ様々な要素を、ゲームのものから引用しています。また、核となるテーマに関しては、外さないようにと心掛けています。
―― 原作でのテーマといいますと、オンラインゲームですから、やはり人と人との繋がりになりますか。 石山 そうですね。原作ゲーム開発者の方とお話した時も「全世界の人とコミュニケーションをとれるようなゲームを作りたい」というお話があったんです。素晴らしいですね。いま、コミュニケーション……人を知るという事が欠落しているご時勢じゃないかと思います。興味を持つとかね。人が何かしら悪い事をするのは、他人に対する痛みが分からないのが原因だと思います。他人を理解するというところは、アニメでも大切にしていきたいですね。ゲームだって、諸外国の人とお話する時、最初は「ハロー」からですよね。そういう身近な事を、実は凄く大切にしていきたい。
―― 確かに、他人の気持ちを考えられない事から起きる事件も増えているように感じます。 石山 ええ。実は第三者がいてくれるっていうのは、本当に素晴らしい事なんですよ。こんなたとえ話があります。素敵なドレスを着た人がいるとします。でも、その人が絶海の孤島でひとりでいたとしたら、本当に嬉しいでしょうか? 他人から、褒められたり喜ばれたりする事によって、はじめて自分も嬉しくなるわけです。ただ人がそこにいる、という事で、どれだけ愛をもらっているかという事です。そんなところを『メイプルストーリー』ではちょっとだけ考えてもらえればな、と思っています。