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ちはやふる 絵コンテ指南書
第四回【通算第九回】
川尻善昭氏に聞く、第九首「しのぶれど」で力を入れたシーン

―― 9話は千早達が太一の家で合宿をする回ですね。どのあたりに力を入れられましたか?

川尻 いちばん気をつけたのは千早と仲間達との「感情のズレ」かな。

―― 「感情のズレ」ですか…。具体的にカットで言うとどのあたりでしょう。

川尻 そうですね。このあたりですね。

反省し謝る千早と、それに対し温かく彼女の誕生日を祝う仲間達

 

―― ああ、この一連は感動してしまいますね。

川尻 この回は千早が強くなるために仲間の状態を考えず暴走してしまって、自己嫌悪になっちゃうんです。

―― 千早は自分の気がつかないうちに、ハードな特訓メニューを仲間に強要してしまうんですよね。

川尻 ええ。そんな自分に気づかされて、千早は非常に落ち込むんですけど、仲間達はそんな彼女のことをちゃんと分かっていて、さらに誕生日をケーキで祝ってくれる。

―― 千早は幸せいっぱいですね。

川尻 仲間に迷惑を掛けて落ち込んでいく千早と、彼女を祝おうとしてくれる明るい仲間達の感情のズレを、ちゃんと見せることを心がけたんです。

―― そのあたりを意識することによって、何が変わってくるのでしょうか?

川尻 感動の度合いが違ってきます。視聴者は千早の気持ちになって見てると思うんです。千早が落ち込む時には、一緒に落ち込む。だから、千早の誕生日も、同じように盛り上がって欲しいと思ったんです。

―― なるほど。

川尻 感情のズレ、という意味では、ラスト近く、あえて千早と視聴者の気持ちのズレも意識していますね。

―― え? 視聴者は千早の気持ちになって見ているというお話でしたよね?

川尻 そうです。でもラストでは、太一に対する気持ちが、千早と視聴者でズレているんです。

―― どういうことですか?

川尻 つまり、視聴者は太一が千早を好きなことを知っているけど、千早はそれを知らない。そこにズレがあるんですよ。

―― ああ、なるほど。確かにそこはズレています。そのズレがあるから、視聴者は千早と太一の関係にやきもきするわけですね(笑)。

川尻 ええ。ここで太一はとても複雑な気持ちになっていますね。太一は千早が自分を好きかどうか、本当の気持ちが分からないわけです。さらに、太一は自分が千早のことを好きだと思っていることに、千早が気がついていない、ということを知っている訳ですから。

―― ああ…太一の中では非常に複雑なことになっていますね…。

川尻 報われない奴ですよね、本当に(笑)。

※なお、『ちはやふる2』にて、川尻善昭氏の最初の絵コンテ回は1月18日(金)の第2話になります。
ご期待ください。

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