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おぎにゃんと学ぼう! アニメの作り方
■第1回 作画監督って何するひと?(前編)
皆さん、こんにちは! おぎにゃんです!!
記念すべき第1回目は、作画監督の吉松孝博さんにお話を聞くにゃん。作画と監督の名前がくっついたこの作画監督という役職はいったいどんなことをしているのかにゃぁ?
監督と名がつくと、なんだか恐れ多い気がしてしまうおぎにゃんだけど、吉松さんはとてもおだやかでやわらかい口調の方なのにゃ。作画監督ってどういうお仕事なのか聞いていくにゃ! それでは、はじまりはじまり〜。

講師プロフィール
吉松孝博
1965年8月27日生まれ 大阪府出身
スタジオライブ所属。主な作品は『トライガン』『十兵衛ちゃん〜ラブリー眼帯の秘密〜』(ともにキャラクターデザイン)『学園戦記ムリョウ』(キャラクターデザイン&総作画監督)など。現在は最新作『大江戸ロケット』にキャラクターデザインとして参加。またサムシング吉松の名前で漫画家としても活躍し、WEBアニメスタイルにてコラム「サムシング吉松の死んぢゃえばいいのに!」を好評連載中。

おぎにゃん
はじめまして! アニメは大好きだけど、どうやって制作されていくのかちんぷんかんぷんの、おぎにゃんです。よろしくにゃん!

吉松
はいよろしく。昔はね、漫画家さんがひとりでアニメ全部の絵を描いていると思ってる人もいたみたいだけどね。

おぎにゃん
! おぎにゃんもそう思ってました! 漫画家さんがこのビルの9階とか10階(注1)にいるのかなぁって……。

吉松
え? 何のこと?

おぎにゃん
しまった! すべったにゃん。……えーと、早速ですけど、作画監督とはなんですか?

吉松
作画統括責任者と言ってね、キャラクターや画面を管理していく役職なんだよ。

おぎにゃん
キャラクターの管理?

吉松
うん。アニメーションは集団作業で作っていくものなんだ。アニメーションの元になる絵を「原画」というんだけど、その原画を描く人もたくさんいて「原画マン」と呼ばれている。原画マンはキャラクター表(注2)というものを参考にしてキャラクターを描いているんだ。だけどたくさんの人が描いているから、人によってキャラクターの顔が変わってしまう可能性もある。原画マンにも色んな個性があるからね。でも、キャラクターの顔がカットごとに変わっていたら困るので、それを管理するんだ。

おぎにゃん
作画監督は原画を描かないの? 指示をするだけ?

吉松
スケジュールに余裕があれば原画もやるよ。原画を作画監督がやれば、修正の手間もはぶけるし。実際は、原画マンが描いたものを上からいじったりもするので、指示を出すだけではないんだ。たまに全部描き直す作画監督さんもいるしね。……うーん、おぎにゃんのために、まずアニメーション制作の流れを簡単に説明しておこうか。

おぎにゃん
助かるにゃん! そういうの待ってたにゃん!

吉松
レイアウト用紙まず、原画マンが絵コンテを元に、レイアウト用紙(※写真参照)という紙にレイアウトを描きます。レイアウトとは、その場面に必要な背景を描いて、その上にキャラクターをどう配置してどう動かすかという情報を描きこんだもの。ようはカットの設計図だね。「背景原図」とも呼ばれます。次に、演出の人は、原画マンが描いたレイアウトは絵コンテ(注3)にあっているのか、絵コンテの意図はちゃんと盛り込まれているのかを、チェックします。チェックしたレイアウトに不備があるときは、原画さんに戻して直してもらったり作画監督に修正してもらいます。絵のうまい演出さんは自分で修正したりもするんですよ。

おぎにゃん
ためになるにゃん!

吉松
修正用紙。奥からアサギ、ワカクサ、ピンク色そして、演出さんがチェックしたレイアウトは作画監督にまわってきます。そうすると作画監督は、レイアウト用紙の上に修正用紙という色のついた紙(※写真参考)を乗せて、今度は作画を監督……つまり、画の統一感を出すために「ここはこうして欲しいな」ということを描いていくんですね。このとき、簡単にキャラを直したりもするんですよ。これを「レイアウト修正」と言い、原画マンはそれらの修正をもとに原画を起こしていきます。

おぎにゃん
つまり、原画を描く前にレイアウトという段階があるのだにゃ!

吉松
そう。レイアウトの段階で、「こんな構図がいいな」「こんな風に動かしたいな」というプランを形にするんだね。

おぎにゃん
ほにゃー。

アニメ仙人 
どろん!

おぎにゃん
わゎ!?

アニメ仙人
おぎにゃんの師匠、アニメ仙人登場なのねん!

吉松
やや! あなたはなぜかマッドハウスのいたるところに現れるという噂のアニメ仙人! 

おぎにゃん 
おいらのお師匠なんだにゃん!

吉松
僕、昨日エントランスホールでマロミ(注4)に話し掛けているところをお見かけしましたよ。

おぎにゃん
がーん! お師匠何してるにゃん!! っていうか、どうしてここへ?

アニメ仙人
吉松くんの説明に付け加えると、実はそういったレイアウトシステムが取り入れられたのはわりと最近、ここ20年くらいのことなのねん。

おぎにゃん
あらら。お師匠は、おぎにゃんの話を聞いてないにゃん。

アニメ仙人
吉松くんがこの業界に入ってきた頃は、アニメーターさんはレイアウトと原画を同時に仕上げて作画監督のチェックへ出していたのねん。けど、そのやり方には効率の悪い部分があったのよ。例えば、原画が5枚描いてあったとするでしょ。でも、そもそものレイアウトが、演出の意向と違っていたら、原画5枚とレイアウト1枚の両方を直さなくてはいけなかったのねん。それが最近、根本的な直しをしなくて済むように、レイアウト段階で演出家や作画監督といった人たちがチェックするようになったのねん。

おぎにゃん
じゃあなんで昔はそうしなかったのかにゃ?

吉松
昔は1本の作品に関わっている人数が非常に少なかったからだろうね。例えば、30分のTVアニメ1本分の原画を2、3人、多くても4、5人で作画していたんだね。その人数でチームになって制作するから勝手知ったる雰囲気というか、少人数で意思の疎通も取りやすかった。けど、今はもう勝手知ったるとかそういう……。作画に関わっている人数が恐ろしいことになっている作品もあるからね。

アニメ仙人
1クラス分の人数が作画、みたいなねん。

おぎにゃん
ほにゃー。すごい増え方だにゃぁ。

吉松
そういう部分もあって、今はレイアウト段階でチェックするシステムが必要なんですね。

 

第1回後編に続く

注1)マッドハウスのある場所だにゃ!荻窪の「アメリカン・エキスプレス」ってビルに入っているにゃん!
注2)各キャラクターの容姿が正面・横・後ろなどのアングルから描かれた表。登場人物の特徴や衣装、アクセサリーなどの指示も描かれている。これをもとに作画をしていくのにゃん。
注3)脚本を絵に起こしコマ割りで流れを作ったもの。詳しくは絵コンテの回で勉強するにゃん。
注4)『妄想代理人』に登場するキャラクター。マッドハウスの入り口、エントランスホールで不審者が侵入してこないよう見張っているよ。いつもご苦労様にゃん!
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