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おぎにゃんと学ぼう! アニメの作り方
■第6回 これで脚本はばっちりにゃ!(中編)

おぎにゃん
脚本の書き方はもう完璧かにゃ?

金春
脚本表紙 参考例脚本には表紙も必要だよ(写真参照)。私は、表紙は最後に書いている。なぜかというと、「通行人A」とか「見物人B」みたいなその回だけの登場人物が何人登場するかは、脚本を終わりまで書いてみないとわからないからね。

おぎにゃん
登場人物の名前の間に、ところどころスペースが空いているのはなぜにゃ?

金春
まず主人公、次に重要なレギュラー、その回限りの登場キャラクター、とか区切って書くと見やすいからだよ。だからこういうふうに区切って書く人が多いと思う。で、表紙を頭から見ていくと、まず作品名と話数が書いてあるでしょ。これは必ず書く。あと、『デ・ジ・キャラットにょ』の場合はAパートとBパートでお話が別々だから、どちらのパートなのかを書く。そして、仮タイトルをつけて、脚本家の名前を入れる。隣に原作者や監督の名前を入れることもあるよ。

おぎにゃん
各話のサブタイトルを決めるのも脚本家?

金春
脚本を書くときに考えるけど、最終的な決定はプロデューサーや監督になる。最初に仮でつけたタイトルがそのまま残っている場合もあれば、全然違うタイトルになる場合もあるね。

おぎにゃん
そもそもなんで用紙の上半分が白いのにゃ? もっといっぱい書けばいいにゃ。

金春
手書きの頃は、「ペラ」と呼ばれる縦20字横10字の原稿用紙に書いていたの。その流れで、パソコンが主流になった今でも、基本的に脚本の長さはペラ何枚ってふうに数えるんだよ。だから縦は必ず20字で書く。それで用紙に余白が生まれてるわけ。これだったら、1枚に横40行入れているので、ペラ4枚分だよね。

おぎにゃん
TVシリーズは1話でぺラ何枚にゃ?

金春
だいたい70枚前後かな。

おぎにゃん
アクションものとかギャグものとか系統によって枚数は変わってくるにゃ?

金春
というよりも、全体のテンポが早くて登場人物が多いとか、セリフが多い、っていう作品のときに枚数が多くなる。逆にじっくり心情を押すようなものは短い。だから、ギャグものはだいたい長め。アクションものは、もし具体的なアクションをたくさん書き込んだら長くなるけど、「それは絵コンテに任せてください」って言われたら短くなると思うよ。『こどものおもちゃ』(注3)という作品をやったときは「90枚書いてください」って言われたけど、それでも枚数が足りなかった。

おぎにゃん
セリフがめっちゃ早口だったにゃん。

金春
それに、にぎやかでがちゃがちゃしていたからね。同時に何人も話す設定だと枚数は増える。でも、途中から心情話が増えてきたら「もう少し枚数少なめでいきましょう」って変わったよ。

おぎにゃん
脚本の書き方はばっちりだにゃん! 脚本を書く以外に、脚本家は何をするにゃん?

金春
会議に出席することも大事な仕事だよね。始めにちょこっと言ったけど、まず最初に発注会議に出る。そして、プロットを書いたらそれを持って本読みに出席する。その後、ハコ書きの時間も含め1〜2週間で脚本を仕上げ、今度は脚本を持って本読みに参加する。

おぎにゃん
本読みって、いったいどんな話が繰り広げられるのにゃ?

金春
たいてい制作会社のプロデューサーが進行&まとめ役になって他の出席者に「何か大きな部分で意見ありますか?」って聞くの。そこで特に何もなければ1ページ目から順番にチェックしていく。出席した人たちが「3ページ目のここなんですけど…」とか「この会話はわかりにくいです」といった意見を出してくる。

おぎにゃん
もし最初に大きな直しが出た場合はどうにゃる?

金春
そういうときの問題点って、「ちょっと盛り上げが足りないような気がします」とか「このままだと、主人公が立ってないです」といった全体的なことなんだよね。「じゃあどういう方向にストーリーを変更すればいいか」という点を話し合う。でも、そういう問題はすでにプロット段階で解決していることが多いよ。そのためのプロットなわけだし。

おぎにゃん
例えば、脚本家の意図とプロデューサーの意見が食い違って、白熱!ってこともあるにゃ?

金春
そういうときはまず、なぜ直しを入れたいのかプロデューサーの意図を聞いて、意見に納得がいけば直す。もし納得がいかなければ、「自分が書いたのはこういう意図からです。ここを直すと、こっちの部分に矛盾が出てきちゃいます」って説明する。それで、相手が納得して意見を引っ込めることもあるし、時には両方の考えの折衷案にすることもあるよ。たまにもめることもあるけど、みんな作品をよくしたい気持ちは一緒だからね。それに、話し合って色々見えてくることは大切なの。

おぎにゃん
例えば、持って行った脚本が一発OKみたいなことはないのかにゃ?

金春
ほとんどないかな。最初に提出した原稿を第1稿と呼び、それを書き直したものを第2稿と言うんだけど、大きな直しはたいてい第2稿くらいまで。でもその後に、「ここに変換ミスがあります」とか「このキャラクターの口調はこうではありません」といった細かい修正がぽつぽつ出てくるんだよ(泣)。だからだいたい2〜4稿くたいまで書き直すの。新人さんだと書き慣れていないから、完成稿に至るまで10稿書いたってケースもある。

おぎにゃん
じゃ、だいたい脚本が完成稿になるまで、1ヶ月はかかるんだにゃ。

金春
うん。でも、1ヶ月ベタにその作品にかかりきり、ってわけじゃないの。たいてい脚本家は3作品くらい掛け持ちして、うまいことスケジュールを組んでいるんだよ。

おぎにゃん
本読みに参加するメンバーを知りたいにゃ。

金春
制作会社のプロデューサーやテレビ局の人、監督は基本的に参加するよ。あと原作者が来ることもときどきあって、最近は原作漫画の掲載されている雑誌編集者が出席するパターンも多い。だいたい10人前後は集まるかな。

おぎにゃん
けっこう大人数だにゃ。絵コンテマンや演出家は参加しないのにゃ?

金春
制作スタッフは監督さんだけってケースが多い。浅香さんもおっしゃってたけれど、絵コンテマンが脚本家と打ち合わせることはほとんどないの。私の個人的な気持ちとしては、担当話数の絵コンテマンや演出家が決まっているのであれば、本読みにも出てもらえたらなぁって思うけど。

おぎにゃん
なんでそう思うのにゃ?

金春
打ち合わせ段階から出席してもらえば、脚本から絵コンテになったときに「こういうつもりじゃなかった」って思うこともなくなるかなって。私はアニメって共同作業のおもしろさだと思うから、脚本を絵コンテ段階で変えてもらってもかまわない。でも、脚本の段階で何稿か直しを入れているということは、「この方向でいきましょう」っていうのはある程度決まっているわけよね。

おぎにゃん
ほにゃほにゃ。

金春
だからその延長線上で絵コンテがよくなっていたらすごく嬉しいんだけど、たまに脚本の意図とは違う部分がいびつに膨らまされちゃうケースもあるの。「ここのシーンを削るならこっちも一緒に削らないとおかしいのに」とか、「ここに会話が欲しいなら、言ってもらえたら私が書いたのに」とか思うこともあって。

おぎにゃん
ちょっぴり悲しいにゃ。

金春
もちろん絵コンテマンや演出家は、作品をおもしろくしようと思いやっているわけで、つまり脚本家の意図が上手く伝わっていないから起こっちゃう事態なの。もし本読みに出席してもらえたら、より理解してもらえるし、その演出スタッフの意見や希望も取り入れた脚本にできるし。

おぎにゃん
なるほどにゃ!

 

 

第6回後編に続く
注3)1996年から約2年間放映され、幅広い世代の支持を受けたアニメ作品。小花美穂原作、スタジオぎゃろっぷ制作なのにゃ。明るく元気な紗南ちゃんに励まされるにゃ! 
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