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おぎにゃんと学ぼう! アニメの作り方
■番外編その2 音響監督のお仕事拝見にゃ!(後編)

おぎにゃん
番組開始時のお仕事も教えて欲しいにゃん!

山田
番組開始時は、まず最初に打ち合わせをする。どういう番組にしたいのか、プロデューサーや監督と一緒に方向性を決める。それからキャスティングに移る。

おぎにゃん
キャスティングは音響監督が決めるのにゃ?

山田
それはケースバイケースだよ。メインの役どころは、はじめにオーディションをして、そのなかからみんなで選ぶ。音響監督は基本的にこのオーディションに参加する。登場が1話だけのゲストキャラは、後から音響監督が決めるってパターンが多いかな。シリーズが始まってから、いちいちオーディションをするわけにもいかないからね。

おぎにゃん
曲のイメージを決めるのも音響監督?

山田
それは監督の作品つくりの仕方による。荒木監督のように楽曲に関する思い入れの強い人もいれば、「音響監督に全部お任せします」っていうタイプの人もいる。それによって、音響監督のスタンスも変わってくるんだ。

おぎにゃん
『DEATH NOTE』の場合は?

山田
『DEATH NOTE』の場合は、「こういうふうにしたい」っていうのをはじめに荒木さんとたくさん話し合った。そういえばこの前、音楽発注の追加に関しての打ち合わせもやった。

おぎにゃん
追加打ち合わせ?

山田
番組が進んで、第2部になったりシリーズが新しくなったときには、音楽を新しく発注する必要が出てくる。新しいキャラクターも登場するから、新キャラ用の曲が必要になるし。それで、音楽プロデューサーや作曲家に「こういう曲が欲しいんですけど…」って感じでもう一度依頼する。

おぎにゃん
音響監督が音楽プロデューサーに依頼して、音楽プロデューサーが作曲家を手配するって感じにゃんだな。

山田
音響監督は番組開始時に、「メニュー」というM1はこんな曲、M2はこういう曲、っていうふうに80曲くらい番組制作に必要な曲を書いたリストを作るんだ。それで事足りれば追加の音楽発注はいらないんだけど、番組が延長になったり、あるいは原作がなくて番組開始時には今後の展開がわからない、なんて場合は追加の音楽発注が必要になる。

おぎにゃん
新番組立ち上げのときのお仕事内容は、キャスティングとこの音楽発注になるんだにゃ! 他に音響スタッフ集めも音響監督の仕事なのかにゃ?

山田
それは作品による。『DEATH NOTE』は僕の意向に沿ったチームを作ることができたけど、音響監督を依頼された時点でスタッフや先ほど話したキャスティングも全部決まっていた、という場合もある。だからケースバイケース。ただ作品づくりは共同作業だから、納得できるものを作るためにはチームワークが大事だと僕は思う。

おぎにゃん
チームワークがだいじ、とにゃ。メモメモ……。

山田
例えば、僕の場合は役者さんの芝居に重きをおくんだけど、効果音ももちろん大切。「ここにこの効果音を入れよう」とか「ここは音楽で見せるシーンにしたい」みたいなのは最初の何話かは細かく指示しても、その後は効果さんに任せる度合いが高くなる。そのときに、肌感覚を共有できるというか、息が合う効果さんだと、音響監督の描いていたような効果音の入れ方をしてくれる。そうすると作品のクオリティも自然にあがっていくしね。

おぎにゃん
同じように、役者さんとのコミュニケーションも大事になるにゃ?

山田
役者さんとのコミュニケーションでいえば、現場の空気を尊重して、あえてフランクにしたり距離を置いて接したりする。音響監督によってやり方は違うと思うけど、現場によってコミュニケーションのとり方は変えていくかな。

スタッフとの打ち合わせも欠かせないのにゃ!

おぎにゃん
アフレコ中に監督から演技に要求がある場合、音響監督が間に入って役者さんに伝えていたにゃ。監督のイメージを役者さんがつかみやすいように、的確な言葉で表すのは難しくにゃい?

山田
難しいよ。「この人にはこういった方が伝わるだろうなぁ」とか考えて、その人その人で言い方を変える。別々の役者さんに同じ言い方をしても、同じように伝わるわけじゃないから。

おぎにゃん
監督の意向を伝えてリテイクをとったけど、監督はテイク2がいいと思い、山田さんはテイク1がいいと思った、みたいなときはどうするにゃ? 今日もちょっとそんな感じのところがあったけど。

山田
そういうときはディスカッションするよ。それで最終的に荒木さんも納得してくれた。感じ方は人それぞれだから、「僕はこう思うけど」みたいな話は出てきて当然の部分でもある。ただ、それはアフレコ中はできるだけ手短に。こちら側でディスカッションしている間に役者さんのテンションが下がらないよう、やはりアフレコはスピーディーに行うべき。テイク1とテイク2のどちらを使うかは後で考えればいい。

おぎにゃん
確かにそうだにゃ。

山田
僕がこの仕事を始めた頃、ある役者さんに「こんなにインターバルが長いとダレちゃうよ」って言われた。その通りで、例えばラストテストをやってから本番前に30分も打ち合わせをしていたら「さっきの芝居を忘れてしまった」ってなるよね。だから、僕はなるべくテンポよくというのを心がけている。

おぎにゃん
なるほどにゃ! 監督と音響監督で意見がわかれる場合のほかに、音響監督と役者さんで意見がわかれる、という場合はどうするにゃ?

山田
僕は、役に関してはその役になりきっている役者さんが一番つかんでいると考えている。「あれ? 違う」って思うことや、それで役者さんと話し合うこともあるけど、表現の仕方はたくさんあるし、芝居に正解はないでしょう。だから僕は演技をしている本人の意見を尊重する。ただ、音響全体を見る役目として「絵にあうかどうか」という点は考える。それと、「役者の芝居」だけじゃなく、作品の流れというか「フカンで見た場合の演出」という場合もあるけど。

おぎにゃん
笑っている絵のときは笑っている雰囲気を出す、とかそういう点だにゃ。

山田
そもそも、「この人の演技なら」って信頼を置いてキャスティングしているわけでしょう。だから音響監督と役者さんの意見がまったく合わない、ってことはないし、音響監督はキャスティングした役者さんを信頼しないと。

おぎにゃん
アフレコ日に役者さんの都合がどうしてもつかないってときはどうするの?

山田
そういうときは、その役者さんだけ別の日にアフレコ収録するよ。体調が悪くてこれない、ってときなんかもそうだね。

おぎにゃん
どうしても役者さんの芝居が監督の意向と違ってしまうってときはどうするにゃ?

山田
それぞれの持っている演技プランに違いがある場合だね。そういうときは、監督との間に妥協点を見つけてやり直すよ。時間と余裕があれば粘れるだけ粘る。芝居の重要度による。終わったあとに、「このセリフは絶対コレでいきたい!」ってときはそのセリフだけ取り直したり。まあめったにないけど(笑)。あと、僕がOKを出しても、役者さんが自分の芝居に納得していなくて「もう1回やらしてください」ということもある。

おぎにゃん
こだわりなのだにゃ。

山田
やはり、キャストもスタッフも全員「魂」を入れてやらないと見ている人に伝わらない。それは非常に大事なことだと僕は思う。

アフレコスタジオには、色んな機材があるにゃ!

おぎにゃん
それはオンエアを見たときに自分でも感じるのにゃ?

山田
やはり満足度は違ってくる。ただ、アニメーションの場合はアフレコ時に完全に絵が完成してるわけじゃないから、放送を見て「え!」って思うこともあって(笑)。「こういう絵だったら、もっとこういう芝居だったじゃん」って(笑)。

おぎにゃん
予想外だにゃ。そういう、共同作業ならではのおもしろさがあったりも?

山田
そう! 「あそこの芝居はちょっとどうだろうなー」と心配してたら、とてもぴったりの絵が入ったり。絵が芝居を助けたり、芝居が絵を助けたり、挿入した音楽で雰囲気がとてもよくなったり。そういう意味で共同作業のよさがある。だからオンエアを見てイメージと違っても後悔することはないんだよ。オンエアを見て、客観的にわくわくしたりね。作品は、ライブだから予定調和じゃおもしろくない! 予期していた以上のモノが来ると、コーフンして鳥肌モンだからね。

おぎにゃん
アニメーションには、色んな人が関わって作るからこその醍醐味があるんだにゃ! 山田さん今日はありがとうございましたにゃん!!

 

 

アニメーション制作は、本当に色んな人が力を合わせているんだにゃあ。
皆さん音響制作の現場についてわかったかにゃ?
次回は、番外編最終回ミキサーのはたしょうじさんのお話を聞くにゃ!
それでは、また再来週〜。
バーイバイにゃん。

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