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いしづかあつこ監督の軌跡
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■連載第3回目
初のTVシリーズ監督『さくら荘のペットな彼女』
――『ノゲノラ』へつづくもの――

―― 初のTVシリーズ監督作品はJ.C.STAFFさんの『さくら荘のペットな彼女』(以下『さくら荘』)でしたね。2クール作品で長丁場だったと思いますがいかがでしたか?
いしづか TVシリーズを自分ひとりで監督したのが初めてだったので、あのときは2クール作品の大変さはあまり知らなかったんですね(笑)。だからお話を頂いたときには「やるやる!」って即答で(笑)。

―― 実際はどうでしたか?
いしづか 1番感じたのは、2クールって絶対にひとりでは走りきれない距離なんだってことです。1クール作品よりも走行距離が長いから、より一層スタッフさんの力と連携が重要になってくる。そういう意味で『さくら荘』は「みんなで作った」という感覚が強い作品でした。

―― 前回のお話でも「みんなで作る素晴らしさ」について仰っていましたよね。
いしづか 私は自主制作の頃にひとりで作業することの限界は感じていましたから。「スタッフみんなで一緒に頑張る」という想いはずっと『よりもい』まで続いてますが、『さくら荘』は特にそれを感じた作品ですね。みんなが家族みたいに一緒に頑張る。

―― 『さくら荘』ではクリエイティブ職を目指している寮生たちがそれぞれ夢に向かって努力しますよね。彼らの置かれた立場は、アニメーションの制作現場と少し似た環境という印象もありました。
いしづか ものづくりをしているとどうしても手の届かない存在や理想と現実のギャップに打ちのめされたりしますから、スタッフはそれぞれキャラクターの誰かしらに共感していたんじゃないかと思います。主人公の空太が感じるもどかしさなどは身に刺さる痛さがありましたね。だからこそ私は「この子たちのドラマを描きたい」と強く思ったし、原画をチェックしていても「ああ、作画さんの気持ちがすごく込められた表情だな」と思うことがありました。

―― いしづかさんが1番感情移入したキャラクターは?
いしづか 七海かなあ。七海は全部自分で背負い込んで自ら潰れてしまうキャラクターなんですけど、私にもそういう部分があるので。あと、無謀だとわかっていても諦めないしぶとさもありますね(笑)。七海は強い子なんです。

―― 七海にしろ空太にしろ、ぶち当たる壁が重たいですよね。
いしづか 七海や空太の、絶対に超えられない壁が目の前にある辛さや、それでも壁を超えたいと思って努力するひたむきさが、視聴者に共感してもらえるといいなと思っていました。

―― エンディングも明日に向っていくような素敵な終わり方でした。
いしづか みんなそれぞれが、問題が解決しなくて壁を超えられないままだとしても、少しでも前に進むために行動していく、希望は捨てないで明日を見る、そんなエンディングにしました。あの子たちは将来幸せになれるに違いないですね。それだけの努力をしてきている。

―― 美咲による答辞も印象的でした。
いしづか 『さくら荘』の打ち上げのときに、実際に私も答辞を読んだんですよ。私の卒業式だと思って(笑)。『さくら荘』は新しい環境で新しく出会った方もたくさんいて、今でも繋がっているんですが、打ち上げのときは皆さんとの別れが辛くて泣いちゃったんですね(笑)。

―― スタッフのお話を少しすると、脚本は岡田麿里さんでしたね。いかがでした?
いしづか 岡田さんの脚本はとても心地よいんですよ。監督は脚本からイメージを汲み取るんですが、読んだときに肌感覚が似ているなと感じて。それは例えば、会話のテンポや切り上げ方、ト書きの描写やリズム感やシーンの切り替わり方なんですが、岡田さんの脚本はイメージが湧きやすくてとても楽しかったんです。家も近所なので、鍋パーティーしようって話したりして(笑)。

―― 『さくら荘』みたいですね(笑)。キャラクターデザインの藤井昌宏さんとご一緒されたのはいかがでした?
いしづか 藤井さんはベテランの大先輩でいつも素敵な絵をあげてくれました。私が藤井さんに甘えさせて頂く感じでしたね。ライトノベル原作に携わるのが初めてだったので、キャラクターのビジュアル表現はかなり手探りだったんですよ。暗中模索するなかで、藤井さんに多々教えてもらいました。

―― 『さくら荘』と『ノーゲーム・ノーライフ』(以下『ノゲノラ』)を続けて見ると、キャラクターの名前が「空太・ましろ」と「空・白」で似ていたり、ましろと白の髪型が似ていたり、シンクロしているように見えましたが。
いしづか それは本当に偶然なんですよ!たまたまキャラクターの名前が似ていたというだけで。

―― 声優さんのキャスティングが『ノゲノラ』も松岡禎丞さんと茅野愛衣さんだったのも偶然なんですか?
いしづか 偶然ですね。意図したわけじゃないです。『ノゲノラ』も芝居を聞いてのオーディションでしたが、茅野さんの白役が先に決まっていて、実は空役のキャストはなかなか決まらなかったんです。何名か候補の声を聞き比べたときに、スタッフのなかで「このふたりの掛け合いはいいね」、「空のキャラクターイメージからして松岡くんだね」という話になって。図らずも『さくら荘』と一緒のキャスティングペアになったんです。私は最初「同じになっちゃった、どうしよう」って悩んだんですが、キャラクターに声が合っていることが1番なので。

―― キャラクターイメージがそれぞれ、松岡禎丞さんと茅野愛衣さんにハマっていたんですね。
いしづか 空太は実直なところがあり、空はニヒルな性格で、ふたりは全然違うタイプなんです。だから、空役に松岡くんの声がハマるのにはホント驚きました。『ノゲノラ』のアフレコでは最初、空を空太と呼びそうになったり、白をましろと言いそうになったりややこしかったです(笑)。

 

第3回目 完
⇒第4回目 『ノーゲーム・ノーライフ』――TVシリーズ そして劇場へ――

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